グーグルマップで見る史跡 「府中青年の家事件」

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2005年3月末日を持って閉館となり、今は更地となっていますが、
この地には「東京都府中青年の家」が建っていました。

この場所で、
「同性愛者に対する公共施設宿泊拒否―東京都青年の家事件」が起こりました。
 その際、利用団体であったoccur(動くゲイとレズビアンの会)が東京都を相手に提訴。1審の東京地方裁判所は1994年3月30日に東京都の処分は不当なものであったと認めましたが、東京都は不服として東京高等裁判所に控訴、東京高等裁判所判決が平成9(1997)年9月16日に出、東京都が上告をしなかったため、判決が確定しました。

 この事件に関しては、
憲法判例百選Ⅰ(第四版)34事件(有斐閣刊「別冊ジュリスト 第154号」・2000年)70-71頁や、判例タイムズ986号206頁,判例地方自治175号64頁でも取り上げられています。

 occurが府中青年の家にて団体宿泊をした際に、青年の家恒例のリーダー会にoccurのメンバーが出席し、自分たちが「同性愛者の団体であり、同性愛者の人権を考えるための活動をしている」ことを説明したところ、同日に宿泊中だった、少年サッカークラブの小学生や青年キリスト教団体のメンバーから、侮蔑的なことを言われたことが事の発端でした。

 この件について行われた臨時のリーダー会では、少年サッ力ークラブは帰ってしまった後であり、青年キリスト教団体のリーダーは旧約聖書の一節(旧約聖書レビ記20章13節の文章「女と寝るように男と寝る者は、両者共にいとうべきことをしたのであり、必ず死刑に処せられる。彼らの行為は死罪に当たる。 」)を引用して同性愛は許されないことを力説しました。

 その後、occurが再度施設の利用を使用としたところ、「他団体との不要な摩擦の危険性」等を理由に本件使用申込みが受理されませんでした。そこでoccurは都教育委員会宛に、本件使用申込みの承認などを求める請願書と要求書を提出しましたが、最終的にoccurの使用を承認しない旨の決定をするとともに、本件使用申込みについても、
都青年の家条例8条の1号「秩序をみだすおそれがあると認めたとき」、
2号「管理上支障があると認めたとき」
に当たるとしてこれを承認しませんでした。また、都教育長は、
「青年の家ではいかなる場合でも男女同室は認めておらず、同様に複数の同性愛者が同室に宿泊することも認められない」というのコメントを出しました。
 それを不服とするoccurは裁判を起こすこととなりました。

 そして、裁判の過程で、東京都が裁判で利用拒否の事由として主張した「男女別室ルール」について、他の自治体の青年の家では男女同室も認めるところもあり、また、グループの自主性で部屋割りを任せている場合が多かったことなどが明らかになり、1審はoccurの勝訴となりました。
 その後、東京都は控訴趣意書で「同性愛という性的指向を、性的自己決定能力を十分にもたない小学生や青少年に知らせ混乱をもたらすため、秩序を乱すことになるのが問題である」と明記して控訴をしたものの、東京高裁は「一般国民はともかくとして、都教育委員会を含む行政当局としては、その職務を行うについて、少数者である同性愛者をも視野に入れた、肌理の細かな配慮が必要であり、同性愛者の権利、利益を十分に擁護することが要請されているものというべきであって、無関心であったり知識がないということは公権力の行使に当たる者として許されないことである。」と述べるとともに、以下の判決が出され、occur側の勝訴となりました。 

 判決要旨は以下の通りです。
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 (一) 青年の家での宿泊は「原則として数名の宿泊者の相部屋であると考えられる。そうすると、特定の2人による宿泊に比べ、性的行為が行われる可能性は、同性愛者においても、異性愛者同様に、それほど高いものとは認めがたい」。
 「元来は異性愛者を前提とした」男女別室宿泊の「原則を、同性愛者にも機械的に適用し、結果的にその宿泊利用を一切拒否する事態を招来することは、右原則が身体障害者の利用などの際、やむを得ない場合にはその例外を認めていることと比較しても、著しく不合理であって、同性愛者の利用権を不当に制限するものといわざるを得ない」。
 (二) 「青少年に対しても、ある程度の説明をすれば、同性愛について理解することが困難であるとはいえないのであり、青年の家においても、リーダー会を実施するかどうか、実施する場合にはどのように運営するかについて、青年の家職員が相応の注意を払えば、同性愛者の宿泊についても、管理上の支障を生じることなく十分対応できるものと考えられる」。もしなお問題があれば、「後に使用申込をした団体の申込を都青年の家条例8条に基づき拒否することも場合によっては可能と考えられる」。
 (三) 「都教育委員会が、青年の家利用の承認不承認にあたって男女別室宿泊の原則を考慮することは相当であるとしても、右は、異性愛者を前提とする社会的慣習であり、同性愛者の使用申込に対しては、同性愛者の特殊性、すなわち右原則をそのまま適用した場合の重大な不利益に十分配慮すべきであるのに、一般的に性的行為に及ぶ可能性があることのみを重視して、同性愛者の宿泊利用を一切拒否したものであって、その際には、一定の条件を付するなどして、より制限的でない方法により、同性愛者の利用権との調整を図ろうと検討した形跡も窺えないのである。したがって、都教育委員会の本件不承認処分は、青年の家が青少年の教育施設であることを考慮しても、同性愛者の利用権を不当に制限し、結果的、実質的に不当な差別的取扱いをしたものであり、施設利用の承認不承認を判断する際に、その裁量権の範囲を逸脱したものであって、地方自治法244条2項、都青年の家条例8条の解釈適用を誤った違法なものというべきである。」
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なお、聖書には死刑の規定がいろいろありますが、


・自分の父あるいは母を呪う者は、必ず死刑に処せられる。(出エジプト記 / 21章 17節 また、レビ記 / 20章 9節 にも同様の記述がある。)
・父または母をののしる者は死刑に処せられるべきである。 (マタイによる福音書 / 15章 4節 )
・人がもし、月のさわりのある女と寝て、これを犯すなら、男は女の泉をあばき、女はその血の泉を現したのである。ふたりはその民の間から断たれる。(レビ記20章18節)

などといったことも書かれています。