横浜トリエンナーレ 2008

lithos_082008-10-27


 このイベントは横浜にて3年に1回開催されるわが国最大級の国際現代美術展覧会。
赤レンガ倉庫、大桟橋国際客船ターミナル、三渓園、運河パークなど屋内外でさまざまな絵、立体芸術、音、身体表現などがディスプレイされています。
(公式HP http://yokohamatriennale.jp/ )

 中でもこのブログを書く上で印象深かったものが3作品ありました。

 オノヨーコの『カット・ピース』(日本郵船海岸通倉庫会場)は、観客(男性・女性)が、オノヨーコが着ている服や下着を、次々に鋏で少しずつ切り取っていくと言う1965年と2003年のパフォーマンスの記録映像作品です。自らの服の切れ端を多くの人に与えるというコンセプトであるにもかかわらず、毅然として洋服を切り取られていくその姿はやさしさ以上に、オノヨーコの信念や力強さが伝わってくる作品でした。
http://www.news.janjan.jp/culture/0810/0810169590/1.php

 エルメスがプロデュースした移動式映画上映室上映作品のひとつ、アリス・アンダーソンの『青髭』。(大桟橋国際客船ターミナル会場)

 原作となっている童話は、「青い髭を生やし、周囲から恐れられていた男が、新妻に鍵束を渡し、『どこにでも入っていいが、この鍵束の中で金の鍵の部屋だけは絶対に入ってはいけない』と言いつけて外出していった。しかし、新妻はその金の鍵の部屋の扉を開け、その中にある青髭の先妻の死体を見つけてしまう。見てはならないものを見てしまった新妻は青髭によって殺害されそうになるが、すんでのところで二人の兄によって青髭は殺され、新妻は青髭の遺産を手に入れて金持ちになった。」という話。
  一方、彼女を男として育てようとする母親に抗いながら育った髭の生えた女性「青髭」と、髭の生えた女性である「青髭」に戸惑いつつも彼に仕えることとなったユニセックスな美貌の青年と、青年と共に「青髭」に仕えることになった彼の母親の3人の関係が描かれています。青髭への恐怖と好意で揺れ動く青年と、青年を守ると約束しながらも自らの欲望を優先する母親、そして自らの性の同一性・アイデンティティについてかみ合わない青髭の苦悩。すっきりとしない映画ではありますが、短い中でいろいろなことを感じさせられる映画です。
http://www.alice-anderson.org/film/07films.html


 ティノ・セーガル『Kiss/キス』はティノ・セーガルの振り付けどおりに、一組のカップルがキスをしたり、抱擁をしたり、離れたり、触れ合ったりということが繰り返されるというもの。私が見に行ったときには日本人女性と外国人男性のカップルでした。
 しかも、その舞台は 大きな茅葺屋根が印象的な合掌造構造の古い(実際に使われていた民家を移築した)民家。
 なんと、かつて岐阜県(飛騨)白川郷の岩瀬部落ではこうした合掌造りの家に最大20人、長瀬部落では最大42人が一つ屋根の下に暮らしていたとの事。白川郷では耕作地が少なく分家ができない、新たに開墾をするためには大家族が必要ということで、トト(家長)とカカ(台所の司)の間に生まれた子どもの中で、嫁を取れるのはアニと呼ばれる長男だけ。次男以下は他家の女性の元に通い(ツマドイ)、二人の間にできた子どもは女性の家の子どもとして育てられる。また、こうした大家族の中ではトト、カカ、アニといった役割のほか、開墾を取り仕切る鍬頭、調理をつかさどる鍋頭という役割の者がいたということです。
 こうした、古い記憶を持つ家の中で、きわめて現代的な愛が紡がれているということがとても不思議な空間を生み出していました。
 なお、三渓園会場は、トリエンナーレを見に来た人だけでなく、ただ、通常の三渓園の庭園散歩を楽しみに来ている人も自由に覗いて見ることができる構造になっているため、少々驚いている人もいる様子で、
トリエンナーレの係員が現代アートでの性の表現としては当たり前のこととして淡々と仕事をこなしているそばで、三渓園の係員が「これは、踊りのようなパフォーマンスをするということで場所は貸し出しているけれども、三渓園として行っているわけではない」と言うことを一般のお客さんに話をしている対照的な姿も印象的でした。
( http://www.sankeien.or.jp/kokenchiku/yanoharake.html )
( http://yokohamatriennale.jp/2008/ja/blog/2008/06/post-8.html )