情報ツールとしてのコンドーム


 私が参加しているデリヘルアダルトよりも、平均年齢の若いデリヘルボーイが毎週金曜日に新宿二丁目のゲイバーに配布しているのが下の写真のようなコンドームです。

 普段の生活の中で、街の中の広告の入ったティッシュ配りのお兄さんや、広告チラシ配りのお姉さんを見ていると、街中では紙ペラ一枚のチラシよりも、ティッシュペーパーつきの広告(=広告付きのポケットティッシュ)の方が広告を受け取ってもらえる確率が高い様子です。
では、配るものが普通の広告ではなく、コンドームだとどうでしょう。コンドームの存在がHIV予防啓発のメッセージそのものだと考えた場合、ただのコンドームと、ついつい集めてしまいたくなるようなデザインのパッケージに入ったコンドームとだともらっていく人はどちらの方が多くなるのでしょうか?やはり、パッケージにこだわりのあるものの方がもらいやすいんじゃないかなぁと思うのです。
 恋人や友達・仲間との、出会いと交流の場であるゲイバーにおいて、カウンターの上にイベントのフライヤーなどと並んで、パッケージデザインの凝ったコンドームが置かれていたり、トイレに行くと、ハンドソープの隣にコンドームが並んでいる。もちろんそれらは“TAKE FREE”。 
カウンターではお客さんどうし、あるいはお客さんとマスターとの間でコンドームやHIVの話題が普通にあがるということ。そして、ちょっと気恥ずかしいと思う人は、他人の目のないトイレの中でコンドームを手に入れることができます。
 コンドームが手元にあるということが、必ずしも直接的にせーファーセックスに結びつくわけではありませんが、コンドームが手元にあれば、「コンドームを使おうかな」と思ってもらえる確立は高くなるでしょうし、コンドームを目にしたり、手にしたりする中で、HIVのことについて考えてもらえたらそれも、ひとつの成果なのではないかと思う次第です。
 相手に何かを伝えるとき、口から発する言葉で何かを伝えたり、文字にして伝えたりすることが多いわけですが、物を通すことでより相手に伝えることができるというものもあるのではないかと思います。

 なお、aktaで以前行なわれた、パネル展示での活動報告において、次のような記述がありました。(要約)

「3年間でコンドームの使用率が10%上昇しました
 HIVの予防にコンドームの使用が有効であることは早くから知られていましたが、ゲイにとって避妊具であるコンドームはなじみの薄いものでした。そこで、ゲイバーへのコンドームの配布することでコンドームを身近に感じてもらおうと考え、2002年のakta開設をきっかけにゲイバーへのコンドーム配布をはじめました。
 新宿2丁目での配布から3年後、このプログラムに接触した人たちの中でコンドームの常用率が10%向上しました。
ただし、同じようなプログラムでも効果が上がらない場合があります。この活動によって、コンドームの常用率が向上した理由としてはいろいろなパッケージのデザインがあるのでいろいろな人に関心を持ってもらえた、3ヶ月に1度デザインを変えるので注目してもらえる、という事があるとわかりました。ただ配るだけではなく、いろいろなメッセージを添えて継続することが大事だということのようです。」

 次の写真のうち、上は、過去に配布されたコンドームのパッケージ見本、下は、配布されたコンドームの中でも上から3列目、左から4つ目コンドームパッケージの中に、コンドームとともに同封された紙片の見本です。